フィリピンにとんかつ専門店「YABU」を監修
フィリピン初のとんかつ専門店は、ひとつの出会いから始まりました
2011年1月のある日の昼、一本の電話が都内のホテルから入り、海外からのお客様がこれからお店に行きたいと連絡がありました。予告通り、その日の昼の終わりに4名の外国人のお客様がご来店。多くのとんかつや揚げ物を注文して召し上がりました。そして、メニューブックや厨房をじっくりと見たあと「フィリピンでとんかつ専門店を開業したい。ついては武信に監修してもらえないか」と打診されたのです。
彼らは、フィリピンでのとんかつ専門店開業のパートナーを探して、日本のとんかつ専門店を回っていたところだったのです。翌日には、オーナーのプロフィールや開業計画など、さまざまな資料をメールでいただきました。オーナーは、フィリピンの有名アイスクリームブランド「セレクタ」を育て上げた実業家でした。
あとで分かったことですが、武信をパートナーとして選んだのは、「とんかつが、サクサクの衣でやわらかくてジューシー」「揚げ物のメニューが豊富」「英語で意思疎通ができた」からとのことでした。しかし、行ったこともないフィリピン。「なんだか怪しい話だし怖い」というのが最初感じたことです。でも、一方で、おもしろそう!という気持ちもあり、試しにマニラに行ってみることにしたのです。
マニラでは、数々の日本食レストランを訪れました。そこで分かったのは・・・
「フィリピンには、なんでも出す日本食レストランはあるけれど、とんかつだけにこだわった、とんかつ専門店が1軒もない。」「フィリピン人は皆、揚げ物、お肉が大好きだ。とんかつ専門店で、いろんな揚げ物を出したら、必ず喜ばれるはず。」ということでした。
「武信のとんかつに心から感動した、その技術、ノウハウを教えてくれないだろうか。」私は、何時間にもわたってそう語る彼の熱心さに心を動かされ、一緒にやってみようと決心したのです。
日本に戻ると、日本から厨房機器の機材を手配してマニラに送り、テストキッチンを作る準備に取りかかりました。同時に、現地では食材の準備を進めてもらい、オンラインでのミーテングを重ねていきました。数か月後、準備が整うと、現地を訪れ、試作と同時に採用したスタッフの技術トレーニングを開始しました。
日本との大きな違いに、戸惑いと試行錯誤の連続でした
しかし、現地に赴いてみると、厨房機器のサイズの規格、食材、現地のスタッフの働き方など、すべてが日本と違い、戸惑いの連続。美味しいとんかつを安定的に作れる状態にするのは、本当に大変なことでした。特に「安定した品質の豚肉を仕入れること」、生パン粉が現地にないため「パンの粉砕機を使ってオリジナルのパン粉を作ること」、「軽やかさを出すための揚げ油の選定」は試行錯誤をくり返しました。せっかく調理のマニュアルができても、その食材が安定的に入らなくなったり。マニュアルを修正しながら何度も研修を行いました。
「武信のとんかつはこのように作る」ということにとらわれず「現地で手に入る食材を、どのように仕込んだら最大限に美味しくできるか」を基準に、味付けも、塩胡椒をきかせ、タレの量を多めにするなど、少し濃いめの味付けで、フィリピン人が好むように仕上げていきました。
とんかつ専門店’’YABU''がオープン!
そして、2011年11月11日。マニラの中心街にあるSM Mega Mallという大きなショッピングモールに‘’YABU: House of Katsu‘’を開業したのです。それは、フィリピンのパートナーと出会ってから、10ヶ月後のことでした。
開業後でも多くの課題がありました。しかし「スピード感をもって、やりながら改善していく」ことに注力。修正と改善をくり返していきました。''YABU''は開業直後から数々のメディアに取り上げられ、フィリピンにとんかつブームを巻き起こしました。お蔭さまで、いまは店舗数も19店舗までに増え、多くのマニラ市民に、日本のとんかつの美味しさを伝え続けています。
フィリピンの支援活動
2011年、フィリピン(マニラ)にて、とんかつ武信の店主 武田和也監修のもと、とんかつ専門店「YABU: The house of katsu」が開店し、現在マニラ市内に19店舗が運営されています。
フィリピンの人々の生活に目を向けてみると、未だ貧困に苦しむ人々が多く存在します。実際にマニラで貧困の状況を目の当たりにし、「この貧困問題に自分は何かできないだろうか」「個人的な寄付だけではなく、飲食店として何かできることはないだろうか。」という想いを持ちました。
そのようなことから、「世界規模で起きている食の不均衡を解消し、 開発途上国と先進国双方の人々の健康を同時に改善すること」をミッションに活動するNPO法人TABLE FOR TWO International(TFT)に賛同し、フィリピンの貧困地域での学校給食・学校菜園の支援を始めました。武信でお食事されるお客様が、定食や丼のご飯の量を少な目にしてご注文いただくと、武信から小学校の学校給食に40円が寄付されます。
武信が支援するのは、1991年のピナツボ火山によって被災した人々の再定住地区にある小学校です。健康状態の芳しくない生徒たちに学校給食を支援することは、児童労働ではなく、子どもたちが小学校へ継続的に通うモチベーションとなり、授業に集中できる元気の源となっています。
写真提供:TABLE FOR TWO